恋愛優遇は穏便に
「うれしいです。喜んでもらえて」


「こんな高いもの、逆に申し訳なくて」


「いいんですよ。僕とむつみさんの印ですから」


高層マンションへ戻り、居間のソファに並んで座った。


「会社ではつけられないのが残念ですけど」


「そのつもりで買いました」


「えっ」


黒ブチメガネの瞳がぎらりと光ったように思えた。


「その指輪は僕に会うときだけつけてください」


「……そうですよね」


でかけるときに指輪をしていってもいいかな、と思ったけれど、政宗さんと一緒にでかけるときにしようと決めた。


「その指輪は僕だけに見せてください」


「わかりました」


「僕だけのむつみさんなんですから」


そういうと、政宗さんは私の洋服に手をかけた。


「ちょ、ちょっと、政宗さん」


政宗さんの手を止めた。


「指輪をしているところをみたら、妙な気持ちになりましてね」


「えっ、でも」


指輪をはずそうとした。

政宗さんの右手が私の左手を握った。


「はずさないで」


「だって、肌にキズが」


「器用にすればいいんですよ」


そういうと、やさしく唇を奪う。

寝室に連れていかれ、二人ともじゃれあいながらベッドに飛び込む。

やわらかなその唇が私の唇から首筋を這い、指輪以外の身につけたものを取り去る。

政宗さんの心地いい重みを楽しみながら、右薬指にはまった指輪とともに愛に濡れていった。
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