恋愛優遇は穏便に
事務室に戻ると、高清水さんが険しそうな顔つきでパソコン画面に食らいついていた。

高清水さんの姿をみて、さっき政義さんと会ったことで緊張していたが、だいぶ気持ちが楽になった。


「す、すみません。遅くなって」


「ああ、大丈夫ですよ。手紙出してもらって助かりました」


「そ、そうですか」


「ちょっと今やっている仕事が手こずっていて。て、森園さん、どうかしたんですか?」


「え?」


「何か、顔、青ざめてますけど」


「いえ、別に」


さすがに別の会社の人のことは言えない。

唇をかみしめていたところで高清水さんがつっかかってきた。


「あ、もしかして今さっき、あたし変な顔してたからですか」


「え、えっと」


そうじゃないんだけどなあ。

高清水さんの顔がますます曇っていく。


「まったく、森園さんは顔に出ますよ。ホント真面目なんだから」


「す、すみません」


「もういいですよ。ファックス届いているんで、処理お願いしますね」


高清水さんからファックス用紙の束をもらい、席につくと、専用フォーマットを立ち上げ、入力をはじめた。

ちらりと隣に座る高清水さんと目が合い、少し頰をふくらませて不満そうな顔をしていた。
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