恋愛優遇は穏便に
相変わらず仕事は雑用的なものばかりだったけれど、メールをやりとりしている人から感謝の言葉が添えられていて、少しでも役に立ててよかったとほっと胸をなでおろす。

政義さんにも印刷物を確認してもらい、仕事を終える。

片付けをはじめていると、政義さんがやはり仕事の手をとめ、機嫌のいい声で話しかけてきた。


「嬉しかったなあ」


「何が、ですか?」


「駅周辺を歩いてたら、ばったりむつみチャンに会えるんだもんなあ」


そうですね、と軽く相槌した。

ちらりと政義さんをみると、銀色のフチのメガネの奥から甘い視線を送っているようだった。


「制服姿のむつみチャンをみられたし。制服姿なんて新鮮だからねえ。うちの部署にも取り入れようかな」


「な、何言ってるんですか」


「制服があろうがなかろうが、むつみチャンは何を着ても似合うからね。あの食事会に着ていたスーツも素敵だったよ」


「……あ、ありがとうございます」


「そのまま、連れていきたかったなあ」


「えっ」


「はいはい、冗談ですよ。冗談」


机の周りもきれいにし、勤務表のサインをしてもらった。

カバンを手にして帰ろうとしていたときだった。
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