恋愛優遇は穏便に
「おはようございます」


いつもの会社なのに、ようやく帰ってこれたような気持ちがする。

何より、北野さんも高清水さんも久々に会える気持ちがしてうれしかった。

同様に二人も私のことを気にかけてくれた。


「研修、むつみちゃんも参加したらよかったのにね」


「あたしも思いました。研修、大変ですけど、その分、楽しかったですよ」


「そ、そうですか」


そういって、ちらりと政宗さんの席をみると、北野さんはわかったらしく軽く頷いた。


「あ、五十嵐くん? 今日は朝イチから本社へ呼ばれてね。そっちへ向かってる」


「あ、ありがとうございます……」


私の弱い声に二人ともキョトンとしていた。

会えなかったのは残念だけど、さすがにあのことがあったから顔を合わせづらかったからよかったのかもしれない。

ほっとしていると、二人とも顔を見合わせている。


「あの、気づいちゃったんですけど。目、腫れてますよね?」


高清水さんがじっと私をみている。


「ホントだ。むつみちゃん、どうかした? まさか、五十嵐くんと何かやらかしたとか」


北野さんの女の勘はさすがだと胸をついたけれど、さすがに事実を述べるわけにもいかなかった。


「昨日夜寝る前にみた映画が悲しかったので、つい泣いてしまって」


「そうなのね。五十嵐くんと何かあったかなって、ちょっと心配しちゃった」


「いえ、そんなことはないんで、心配してくださってありがとうございます」


「じゃあ、今日は五十嵐くんがいないので代わりにわたしが朝礼をはじめます」


「よろしくお願いします」


高清水さんは朝礼中、ちらりと私を横目でみて、私が気づくと北野さんに視線をあわせていた。
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