恋愛優遇は穏便に
昼休みもあまり食欲がなかった。営業から戻ってきた北野さんが声をかけてくれた。


「大丈夫? 体調でも悪い?」


「え、大丈夫です」


「無理しないでいいからね」


北野さんは穏やかな声で心配してくれた。

午後も高清水さんに頼りっぱなしになってしまい、結局定時で仕事を終えた。

ロッカー室へ入り、グレーのパンツスーツに着替える。

気持ちを切り替えて仕事にのぞもう。

ぐっと全身に力を込めながら、政義さんの会社へと足を運んだ。


「こんばんは……」


「やあ、むつみチャン。会いたくてしかたがなかったよ」


私の顔をみるなり、政義さんは甘く低い声を部屋中に響かせた。


「……そう、ですか」


「これでもおつきあいしているんだから、心配して当然でしょ」


「つきあうだなんて、私は認めてませんから」


「あら、そう。まあボクはむつみチャンのこと、大好きだからそんなこといっても関係ないけどね」


そういいながら、鼻歌まじりでパソコンで仕事を進めていた。

いつもと同じテンションに一気に疲れが出てしまうけれど、仕事に来ているのだ、と心に言い聞かせてパソコンを起動する。

メーラーを立ち上げると本社の総務からメールが届いていた。

ダンボールが届いていて、中のパンフレットと付随する資料を揃え、封筒に入れて各署へ送ってほしいとの仕事の依頼が入っていた。
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