恋愛優遇は穏便に
恋の問題点における切り札は
11月に入った。ベランダに通じる窓からの隙間風が冷たく感じられるようになった。

足元が冷えてもそのままに、朝からため息ばかりつくようになった。

テレビをつければ、すでにクリスマス用のケーキのCMが流れ、情報番組でも今年行きたいクリスマスイルミネーションを見に行く場所ベスト3なんていう特集が組まれて、街頭インタビューに答えるカップルがうらやましくうつった。

支度をして、出勤すると、近くの外食チェーンのお店の前にあったハロウィンの飾りはなくなり、もうクリスマス用にイルミネーションが飾り付けられていた。

クリスマスか。

今年は政宗さんと過ごす予定だったのに。

木枯らしに吹かれながら、今日も仕事先に向け、会社へ向かう群れの中に溶け込みながら、歩みを進めた。

気落ちしながら、会社のドアを開け、ロッカー室で制服に着替える。

何か事務室が騒がしい。

ドアを開けると、焦げ茶色のスーツに赤いネクタイをした政宗さんが北野さんと書類を見ながら打ち合わせをしていた。

政宗さん……。

久々にみせるスマートでさりげないその姿がすごく素敵で輝いて見える。

会いたかった。

政宗さんの姿で胸が激しく高鳴っている。

打ち合わせが終わり、私の視線に気づいたのか、私の顔をみると、途端顔を背けた。


「ちょっとまだケンカ中? 仲直りしなさいよ、五十嵐くん」


「さ、朝礼をしましょうか」


北野さんの言葉に耳を貸さずに朝礼がスタートした。


「今月は所長研修が行われるので本社への移動が多くなります。そのほかは年末に向けて、代理店からの発注が増えていくとおもいますので、よろしくお願いします」
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