恋愛優遇は穏便に
「ちょうど夏休み前にできあがるそうで、よかったですね」


宝石店の店員さんに見送られながら、駅方面へ歩いていった。


「はい」


「あ、そうそう。重要なことがあります」


「なんでしょう?」


「新しく住むところを探さなくてはいけません」


「え?」


私は思わず立ち止まってしまった。

街路樹には蝉がとまっていて、ずっと鳴いている。

政宗さんが引っ越すっていうのはどういうことなんだろう。

「実は兄貴が海外から帰ってくるんです。兄貴が帰るまでは好きに使っていい、と言われていたんですが」


「探せばいいんですか?」


「はい。もちろん、むつみさんと一緒に生活できる場所ですけど」


「政宗さん……」


「大好きなむつみさんとずっとずっと一緒にいたいから。まずは一緒に暮らしてという計画の一環です」


「うれしいです」


「今よりも手狭になると思いますが、むつみさんがより近くにいられるんで僕は手狭でも大歓迎なんですが」


「私もですよ」
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