恋愛優遇は穏便に
政宗さんと一緒に住めるなんて夢のようだ。

コンビニにあった無料の住宅情報誌を片手に街中にある不動産屋へ向かう。


「駅から近くて二人で住めるところはいいところがあったんですけど、さっき決まっちゃって。おひとりでしたら紹介できる案件があるんですけどねえ」


小太りの半そでシャツを着ていたおじさんが面倒くさそうに奥の棚から分厚いファイルを出し、目の前の机に広げた。

駅には近くていい物件なのだが、ワンルームで今私が住んでいるところとさほどかわらなかった。


「もう少し条件が整ったら二人で住める場所を探しましょう」


そういうと、政宗さんが一人で住める場所を探して、結局私のマンションの近くに決まった。

「急がなくても二人のマンションを行き来すればいいんですし。その間に納得がいくマンションを探していけばいいんですよ」


そういって私をなだめてくれた。

政宗さんも残念そうにつぶやいた。


「時間はあまりないですが、会社でもむつみさんと会えるからいいか」


「そうですけど、でも」

私は言葉を濁す。

政宗さんもその理由はわかっている。
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