恋愛優遇は穏便に
私は派遣社員の身でもあり、一方は所長だ。

恋愛トラブルで会社に迷惑をかけたくないから、おおっぴらにはできない。

本当はオープンでいきたいところだけれど、大人の事情を加味してあくまでも派遣と派遣を雇う所長という間柄で表向きを装うことにした。


「高砂さんがね、おしゃべりではなければねえ」


そういって政宗さんが苦笑する。

本社総務の高砂さんは噂話や恋愛話が大好きな女性だ。

別に害はないんだけれど、騒ぎ立てるのに一役買うひとなので高砂さんの耳には入れないように繕うことにした。

ある計画で本社営業部長の駒形さんや政宗さんの先輩である栗林さんには私と政宗さんの関係はわかっていて、大人の対応をしてもらっている。


「私が辞めて他の会社で働けばいいだけなんですけど」


「ダメです。派遣の期間はちゃんと守ってもらわないと」


契約期間は1年。3月までまだ時間がある。

契約期間が終了しても申請すればまた1年働ける。

けれど、やっぱり年齢的なものがあるから正式に雇用してもらえるところを探したいと常々感じるようになってきた。

このことは政宗さんにはまだ言っていない。

せっかくいい関係を築けるようになったのを自分から壊すようで言えなかった。
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