恋愛優遇は穏便に
9月も後半をすぎると朝の風がだいぶ冷たく感じられるようになった。

週のはじめの朝礼は10月に行われる全体研修旅行についての話だった。

どうやら隣の県の宿泊施設で研修が行われるそうだった。

朝礼が終わって、各自準備しているところで、北野さんが声をかける。


「連れていってあげられなくて、ごめんね」


「いいえ、いいんですよ」


「しかたないですよ、規則なんですから」


あからさまに高清水さんが口をはさむ。

北野さんは高清水さんをちょっとだけにらんで話を続けた。


「一応、駒形さんにもお願いしてみたんだけどね。派遣の人は前例がないっていわれちゃって」


駒形さんにお願いしても会社の決まりだから無理なんだろうなあ、と思いながらしぶしぶ首を振る。

見かねて高清水さんがやっぱり口をはさんできた。


「研修っていったって、遊ぶこともありますけど、それ以外は講習とかあってきついんですから。あ、もちろん、お土産は買いますから」


「……ありがとうございます」


高清水さんは照れながら仕事の準備をして、北野さんも安心してカバンを持って営業へむかった。

政宗さんも一部始終、こちらを見ていてニコリと笑っていた。
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