恋愛優遇は穏便に
「なんか変だね。具合でも悪いのかな」


そういうと、私のおでこにそっと大きな手が触れた。


「ちょ、ちょっとやめてくださいっ」


「熱はなさそうだね。安心した。出社してすぐに暗い顔しちゃって」


政義さんはゆっくりとおでこから手を離してくれた。


「……いえ。ご心配ありがとうございます」


「ケンカでもしたの? 政宗と」


「いえ、そうではないんですけど」


私の顔をじっと見つめ、しばらくうーんと言いながら腕組みしていると、わかったらしく、ああ、と大きくつぶやいた。


「ああ、そっか食事会、政宗に聞いたからか」


そういうと政義さんはニコリと無邪気な笑顔をみせた。


「政宗も一緒だからいいんじゃない?」


「そ、そうですけど」


「じゃあ問題ないんじゃない? 他にしたいことでも、あるの?」


「……ありません」


「ボクはしたいことはたくさんあるんだけど」


そういって、クスクス笑って政義さんは自分の席へと戻っていった。

大きな手で触られたおでこが熱もないのに熱く感じられた。
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