恋愛優遇は穏便に
「ここでこうやって抱きあうのも今日でおしまいなんですね」

金曜日の夜。

駅近くのお店で食事をとって、以前の部屋に戻ってきた。

引越しの手続きを済ませたり、部屋の掃除をしたりして夏休みの大半がつぶれてしまったけれど、政宗さんと二人の時間を過ごすことには変わりがなかったから別によかった。

「そうですね」


ベッドしかないこの部屋。

互いの熱や汗を感じて何度もとろけあったこの場所ともお別れだ。


「はじめてむつみさんとここで抱き合った日のこと、今でも思い出します」


デザートを食べるつもりが、食べられてしまったあの特別な夜だった。


「新しいところでもたくさん愛し合いますから」


自然とあついくちづけをかわした。

政宗さんは白いベッドに私をやさしく押し倒す。


「むつみさん、愛していますよ」


「政宗さん……」


何度も何度もカラダに愛をたくさん刻んでくれる。

私も返したい気持ちでいっぱいだったけれど、僕がするのでむつみさんは委ねてと息も絶え絶えで言ってきてくれる。

どんなに激しく果てたあとでも、そばで見守っていてくれて、ゆっくりと髪の毛を撫でてくれた。


「その先にみせる、むつみさんの表情が大好き」


そういうと、政宗さんからキスをくれた。

あんなにたくさんキスをしたのに、初めてあったときと同じような気持ちにさせてくれる。

政宗さんを好きでいてよかった。

これからも政宗さんのことを想って生きていこうと思った。
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