恋愛優遇は穏便に
「いろいろまとめてもらいたいものがあるんだけど」


と政義さんが部署から来た段ボールを大きな机に置いてくれた。

中を広げると書類の山だった。

統括マーケティング・マネージメント室とかっこいい部署とは名ばかりに他の部署から会議に使用する統計づくりだったり、来年度の会社概要のパンフレットの文字校正をしたり、ファイリングしたり、文書作成をした。


「なんか、こんな仕事で悪かったね」


「いえ、仕事ですから」


多くの資料を机の上に広げながら、指定されたグラフや表を作成していた。


「いい肩書きの部署だけど、まだはじまったばっかりの部署だから、こんな閑職みたいなものだけど、これから統括マーケティング・マネージメント室として独立して活動できるようにするから」


「はい……」


私の顔をみて、安心したのか、政義さんはうなずきながらパソコンとにらめっこしていた。

しばらく仕事に集中し、ようやく仕事が終わる。

政義さんは眉間にしわをよせながらキーボードを叩いている。

政義さんも集中しているのだな、と思ったけれど、まだ他にやらなければいけない仕事があったので、小声で政義さんを呼ぶ。

「室長……、政義さん、文書作成終わりました。政義さんのパソコンに送りましたので、確認お願いします」


「わかった。確認するね」


政義さんは眉間にしわを寄せていたけれど、すぐに普段の顔に戻り、自分の仕事を中断し、文書を確認してくれた。


「むつみチャン、さすがだね。書類まとめてくれたんだ」


「ダメでしたか?」


「ううん。しっかりやってもらえてありがたいよ」


政義さんはやさしく微笑んでくれているのだが、私には甘ったるくのしかかるような笑顔だった。


「政宗が見初めるだけあるね」


「えっ」


「うらやましいよ」


そういうと、政義さんはふふふと軽く笑い、これ関連部署に送るからといってくれた。
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