恋愛優遇は穏便に
2時間もあっという間に終わってしまい、やりかけの仕事が残ってしまった。


「あの、この仕事、途中になってしまったんですけど」


「ああ、この資料だったら、来週でも構わないよ」


「それならよかったです」


政義さんは私の言葉を聞くと、ニヤリと口元をつりあげた。


「それとも残業する?」


鋭い瞳から放たれた甘くしびれそうな視線や心に響く低音のボイスにぎゅっと体ががんじがらめになりそうになる。


「い、いえ、それは……」


「だよね。これから政宗と会うんだもんねえ」


政義さんは白々しく大きな声で言いのけた。

私は聞かないふりをして、勤務表に今日の仕事の時間を記入して、政義さんにサインしてもらった。


「今日もお疲れ様」


「ありがとうございました」


勤務表をもらい、机の上の資料を片付けていると、政義さんが立ち上がり、こちらに近づいた。


「政宗とはどれぐらい付き合ってるの?」


「まだ付き合ったばかりですけど」


「そうだったんだ」


政義さんは私を上から下までなぜか舐め回すようにみている。


「あのさ、むつみチャン、政宗のこと、知りたくない?」
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