恋愛優遇は穏便に
そうか。政義さんは私の知らない政宗さんをみているんだ。


「えっ」


「だって、まだ付き合って日が浅いんでしょ」


「そうですけど」


「いろいろと知ってるんだけど」


「……それは政宗さんに聞きますから」


「聞けないことだってあるんじゃないかな。たとえば昔の恋人のこととか」


「昔……」


「知りたくない?」


「え、でも」


「政宗に教えてっていっても教えてくれるとは限らないんじゃないかな」


確かに私も大和のことを話したがらなかったように、政宗さんも昔のことなんか話したくもないのはわかる。

けれど、昔の政宗さんがどうだったのか、知りたい気持ちはある。


「悪いようにはしないよ」


そういうと、気がつけば私の肩にかかる髪の毛を大きな指でもてあそんでいる。


「そういう素直なところが好きなのかな、政宗は」


「政義さんっ!」


あわてて体を後ろに引き、髪の毛の先をもてあそんでいた指から離れた。


「むつみチャンの素敵なところ、ボクは好きだけど」


そういうと、政義さんはくすっと笑った。
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