恋愛優遇は穏便に
一人の部屋に帰ると、胸が苦しくなる。

冷たいベッドにひとり、転がって天井をみる。

もう少し政宗さんと一緒にいたかった。

いたら話していたかもしれない。政義さんのことを。

食事会で政義さんは私のことをいうんだろうか。

そうしたら、せっかく久々に兄弟で会えたのに、台無しになる。

食事会を穏便に済ませられるだろうか。

夜が深くなればなるほど、不安になってくる。

早く来週が終わってほしい。

結局眠りについたのか、ついていないのかわからないまま、朝を迎える。

お弁当をつくり、洋服に着替え出勤する。

風が冷たく、時折強く吹く風の中に金木犀の香りが混じっていた。

透き通るような空を見上げながら、会社の入っているビルへと足を進めた。

制服に着替え、仕事モードに頭をシフトさせて、事務所の中へと入る。

北野さんも高清水さんも政宗さんもそろっていた。

私の机の上には何やら小さなダンボールが乗っかっている。

「朝礼を始めます。まず来週、衣替えなので、むつみさんの冬服が本社から届きました」

政宗さんはニコリと笑い、私の机の上を指差した。

中を開けると、黒のブレザーや厚手の黒いスカートやベスト、長袖シャツが入っていた。

「確認できたようですので、次に話を進めます。今日は僕と北野さんは同じ営業先を戻り、本社へと向かいますのでよろしくお願いします」

みんなで挨拶をして、朝礼は終わった。
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