恋愛優遇は穏便に
月末はいろいろと忙しくて、来月に部品がほしいという企業が増えていつもの処理よりも多めになる。

さらに政宗さんや北野さんが新規契約してきただろう企業から新規に受注が入り、発注業務も重なり流れるように時間は過ぎていく。

昼休みの休憩時間は北野さんや政宗さんは戻ってこず、結局高清水さんとたまに栗林さんが冷やかしにやってくるだけだった。


「今週、今月もお疲れさまでした」


高清水さんから確認印を押された勤務表をもらった。

気づけばもう金曜日へと駒を進めていた。

FAXで勤務表を人材派遣会社に流し、家に届けられていた新しい勤務表を机の中へとしまう。


「もう10月なんですね。早いですね」


「そうですよね」


高清水さんとたわいもない話をして、事務室をあとにして、ロッカー室へと向かった。

ここの仕事は無事に終わったけれど、これからが大変なんだよな、と顔をこわばらせる。

白い長袖ブラウスに黒のチェックスカート、キャメル色のブレザーを羽織る。

これから次の仕事先に向かうんだ、と気合いが入った。

そして、仕事が終わったら、食事会が待っていると思うと気が滅入るけれど、今からは別の仕事なのだ、ともう一度気合いを入れた。

会社のドアを開けると、目の前にチャコールグレーのスーツを着た政宗さんが立っていた。


「お、お疲れ様です」


「素敵な格好ですね」


「え、ええ」

「これからどちらへ?」


「あ、あの用事が」


「そうでしたか。連絡待ってますから。お疲れ様でした」


「は、はい。お先に失礼します」


ドキドキと胸を高ぶらせる。

政宗さんは何事もなかったようにニコリと笑って会社の中へと消えた。
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