恋愛優遇は穏便に
「政義さん、確認お願いします」


印刷したものを渡し、政義さんは納得した表情をみせて、安心した。


「これでOKだよ」


「ありがとうございます」


印刷した書類を返却してもらい、きれいに揃えて大きな白いテーブルの上に並べていった。


「作業ご苦労様」


「いえ」


総務部から頼まれた書類を各部署へ送るために発送準備をしていた。


「食事会、楽しみだなあ」


政義さんは向かいに座り、机に頬杖をつき、ニコニコ笑っている。

私は作業していた手をとめた。


「あの、お兄さん」


「お兄さんだって。何? むつみチャン」


政義さんの声が跳ねている。とてもごきげんそうだった。

ごくりと唾を飲み、息を吐くように話した。


「明日、話すんですか?」


「何を?」


政義さんはすました顔をし、はぐらかしているような空気を発している。


「私とお兄さんとのこと」


「それ、政宗に話していいの?」


「そ、それは」


私の困っているところをみて、政義さんは目を細める。


「まだ内緒にしておきたいんだよね?」


「え、ええ」


動揺しているところをみて、政義さんは首をうんうんと縦に動かす。


「大丈夫。僕の口からは話さないから」


「そうしていただけたら、ありがたいです。政宗さんには時期をみて話しますから」


「へえ。堂々としちゃってるねえ」


「政宗さんを一番に考えてますから」


「でも、ボクとむつみチャンだと厄介なことになるかもよ」

銀色のメガネの先の瞳がぎらついたように思えた。
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