恋愛優遇は穏便に
「政宗、ワインでいいかな?」


「それでどうぞ」


政義さんはウェイターさんを呼び、ワインリストをもらうよう指示した。

しばらくして政義さんにワインリストが届けられると、吟味し、聞きなれないワインの名を告げ、ウェイターにワインリストを返却した。

前菜が白いテーブルの上に乗る。

そして、その後を追うように、ワイングラスが並べられた。

聞き取れなかった名のワインは赤ワインでボトルに貼られたラベルの印字をみるけれど、どこか高級感を物語っていた。

政義さんがテイスティングをして、軽く頷くと、ウェイターさんが次々にワインを注いでくれた。

政宗さんのワイングラスが満たされたを見計らい、個々のグラスを持ち上げる。政義さんが声をかけた。


「久々の再開と新しい未来へ乾杯」


グラスが傾けられた。グラスに入った赤ワインが間接照明の明かりに照らされ、きらめいていた。

口をつけると、ぶどうのいい香りとともにすっと喉ものを通り過ぎた。

今まで飲んできたワインの中で一番おいしいと思った。

前菜もスープも口にあった。

手元に視線を感じる。

視線をたどると、ワイングラス片手に政義さんがこちらをみていた。


「兄さん、さっきから進んでないけど」

政宗さんはそれを見つけて、強めの口調で言った。


「きれいな花に見とれちゃってね」


クスクスと笑いながら政義さんはグラスに口をつけた。
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