ガキ的愛情表現の結末【完】
♤1
「えー、やだよ。
 せっかくレギュラーになれたのに~。
 お父さんだけ行きなよ~」


小学5年生になったばかりの渡辺有希(わたなべゆうき)は、夕食時、ご飯粒を口から派手に飛ばした。


「あ~、キッタねえなあ――52.8cmも飛ばしてやんの」


ひとつ年下の弟、隆史(たかし)は、どこから持ち出したのか、メジャーを、有希の前から机の上に広がっているご飯粒へと伸ばしていた。


「うるさ――あ、これ、私のじゃない。
 無いと思ったら、やっぱりアンタね。
 家庭科の時間、先生に怒られたんだからっ」


そう言うが早いか、有希はその仕返しとでも言わんばかりに隆史の頭を殴った。


隆史は「痛っ」といったん頭を押さえたが、


「なにすんだよ、チビっ」


自分もたいして変わらぬ身長にもかかわらず叫ぶと、すぐに有希に跳びかかった。


そして、2人はリビングルームをリングにしてアマレスを始めた。


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