ガキ的愛情表現の結末【完】
――因果応報。


――自業自得。



水風船をまともに顔面にくらい、びしょ濡れになった有希。



「マヌケだなぁ。それくらい取れよ」


哲也のバカ笑いを見下ろし、


「あ、暑かったから、わざとよ。
 あ~、涼しいっ」


悔しさを隠し、ひたすらオーバーに下敷きを振ってみせた。


そして、力を入れ過ぎたあまり、ヒビが入っていた下敷きがバリンと鈍い音を立てて割れた瞬間、


「おい、東っ。
 いつまでサボってるつもりだ。
 とっくにチャイムは鳴ったぞ」


哲也の担任でもある体育教師、大城(おおしろ)の怒鳴り声が響き渡った。


「あ、やべっ」


哲也はバカ笑いをひきつらせ、他の生徒たちが集合している方へと慌てて駆けていった。


「ふん、マヌケは自分だろうが――あ、コケた」


有希は哲也の後ろ姿を目で追いながら、満足そうに笑みをもらした。



前髪から水を滴らせつつ、有希が席に着こうと振り返ると、


「渡辺……おまえは、ほんとに……」


担任教師、新村(にいむら)の、深いため息にぶつかった。



そう。

チャイムはとっくに鳴っていた。



「後で職員室に来るように」




かくして。


有希と哲也のやり取りをずっと見ていたクラスメイトたちは、



どっちもマヌケなんだよ。



内心ツッコミを入れるのであった。


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