ガキ的愛情表現の結末【完】
この日は夕食が始まってすぐ、父・大作(だいさく)が引越しの話を口にしたため、


「今日はもう、夕飯抜きですっ」


桂子に言い渡された時、隆史は途方に暮れて、有希に恨みがましい目を向けた。


「姉ちゃんのせいだぞ」

「なによ、もとはと言えば、アンタが私のメジャー取ったのが悪いんでしょーが」


有希は反射的に、またもや隆史の頭を殴ろうとしたが、ここでまたケンカを始めると明日の朝ご飯まで食いっぱぐれることになるので、


「とにかく何か食べよう……」


台所へ行き、食糧庫をあさり始めた。


一食くらい抜いた方がケンカをするエネルギーがなくなっていい、と桂子は思うのだが。

有希はサッカーチーム、隆史は野球チームに入っており、エネルギー消費量は高い。


だから一食抜くと、翌日の給食で他の子供たちに迷惑をかけることになる。


学校の個人面談でそのことをやんわりと注意されてから。

有希にも作れそうなもの――例えば、カップラーメンやカップヤキソバやカップうどんを、食糧庫に入れておくようになった。

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