ガキ的愛情表現の結末【完】
保健室にやって来た哲也は、


――コンコン


ノックしてからドアを開けた。



「あ~ら、謝りに来たの~?」


有希はいつものように生意気な口調で、哲也の神経を逆撫でようとしたが。


哲也には何も聞こえていなかった。



いつもはポニーテール――正確に言うとそんなに色っぽいものではなく、ただ頭の後ろで無造作に束ねているだけの有希の髪が下ろされていて。

哲也には、どんなアイドルよりも、有希が可愛く見えてしまったのだ。


そして、有希が転校してきた日のことを思い出した。


有希を見た瞬間、それまで経験したことのない不思議な感覚に包まれたのだが。


当時、哲也は悪ガキで、女子を泣かせては喜んでいた。


だから、新しい獲物が現れてワクワクしているのだと思った。




だが、本当は「ワクワク」ではなく「ドキドキ」が正しかった。




不思議な感覚の正体は、恋。


初めて会った時から、哲也は、有希を好きだったのだ。


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