ガキ的愛情表現の結末【完】
そんなこんなで夕飯を食べ終えた悪ガキ2名は、勉強するなんてほんの少しも思い浮かべずに、リビングルームのテレビでお笑い番組を見て至福の時を過ごしていた。


2人がマヌケな表情で笑っていると、


「おい、そろそろ引越しの準備をしろよ。
 あと1カ月もないんだからな」


大作がさり気なく言った。


なぜさり気なくなのかというと、大作はナイターを見たかったのだが、この2名の悪ガキたちと正々堂々とチャンネル争いをして勝利を収める自信がなかったからだ。


有希と隆史はいつもケンカをしているが、テレビ番組に関しては意見が合った。


ドラマなどは先週までのことを覚えていられないのか、ほとんど見ない。

もっぱら、アニメとお笑い番組ばかりである。


「そんなこと言って、ナイター見ようとしてるんでしょ」


有希は真相を見抜いたが。

いつものこと、である。


けっして有希の勘が鋭い訳ではない。


「私、行かないよ。
 5年経ったらまた戻って来るんでしょ。
 だったら、お父さんだけ行きなよ。
 単身赴任なんて、カッコイイじゃん」


「ふむ……そう言われてみると、確かに。
 単身赴任か……」


大作は、子供の想像を超えるなにかしらに思いを馳せているようだったが。


「何言ってるの。
 お父さんが一人でまともな生活ができると思ってるの?
 まったく、お父さんはいつもそうなんだから。
 だいたい、この前だって――」


桂子が手を拭きながら現れると、悪ガキ2名はソロソロと2階の自分の部屋へ避難を始めた。


大作への説教が終わったら、次は自分たちの番だということがわかっていたからだ。

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