ガキ的愛情表現の結末【完】
ふと、人が走って来る気配を感じて振り返ると。


――哲也だった。


哲也は裕之のそばに来ると、呼吸を整えるのももどかしく、口を開いた。


「オレ……協力……できない。
 オレも……アイツが……好き……だから」


乱れる息の間から、それでも本心を吐き出した。


そんな哲也をじっと見つめた後、裕之はふっと笑った。


「さっき言ったの、ウソだから」

「え?」

「確かにユウのことは好きだけど、それは友達としてだから。
 告白する気なんてないよ」

「は?
 じゃあ、なんで――」

「だって、見てられないよ。
 高木さんと仲良くしてヤキモチやかせようとしてるみたいだけど、いつまで続けるつもり?」

「そ、そんなん……してねぇし……」

「そろそろ別の方法考えなよ。
 もう、あんまり時間ないんだから」

「え?」

「ユウ、6月に静岡に引っ越すんだよ」


やっと落ち着いてきた哲也の呼吸が、一瞬止まった。


「あ、これ、誰にも――ユウにも言わないでね。
 まだみんなに知られたくないみたいだから」

「あ……うん……」


裕之と別れてからもしばらく、哲也は茫然としていた。


< 54 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop