ガキ的愛情表現の結末【完】
3月のある寒い午後。


部活が始まってすぐ、強めの雨が降ってきたため練習が中止になった。


部室で着替えていると、


「おーい、誰かひとり残って、資料整理手伝ってくれ」


氷川先生が現れた。



「資料整理?
 だったら頭が良くて几帳面なヒロだな」


圭太に言われて氷川先生と目が合った瞬間、


ーー以心伝心。


氷川先生の意図に裕之は気がついた。



「ごめん。今日早く帰らなきゃいけないんだ」


とりあえず断ってみるが、最終的に哲也が選ばれるようにしなければならない。


それが、氷川先生の思惑だからだ。


「じゃあ、やっぱり、キャプテンに」

「なんでだよ、公平に決めようぜ」

「だいたい1人でっていうのが――先生、2人にしたら?」

「ああ、もう、渡辺には頼んであるんだ」



渡辺――?



瞬間、全員の動きが止まった。



だったらオレが――。


哲也は、だが、その言葉を胸にとどめた。



そしてまた。


今こそ、哲也の恋を応援するチャンス!!


応援団員たちも意気込んだのだが。



なにしろ、哲也は「資料整理」には最も相応しくない人材。


哲也の名前を「さり気なく」出すのは、どう考えても無理があったのだ。

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