ガキ的愛情表現の結末【完】
名案が思いつかず沈黙する彼らに見切りを付け、


「先生が決めてください」


裕之は氷川先生に任せることにした。


「そうだな。じゃあ――」


氷川先生は部員たちをひと通り見渡し、


「東、頼む」


哲也を指名した。



氷川T、ナイス――。


その判断に、彼らの目は輝いた。


もちろん、哲也の目も。


だが、みんなの手前、あっさり受け入れることはできない。


かと言って他の者にされても困るので、


「なんでオレなんだよ」


哲也は弱めに反抗してみせ、



「資料の整理ぐらいできないとな。
 先生はおまえがいちばん心配なんだよ」


氷川先生が言い終るやいなや、


「ったく、早く帰りたいのによォ」


口を尖らせつつも、カバンを手にするなり立ち上がった。

それはもう、とてつもない速さで。




――わかりやすっ!!


その場にいた全員に心の中で突っ込まれていることも。


そして数秒後、部室に爆笑の嵐が起こることも知らず。



哲也は軽快な足取りで部室を出て行った。


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