ガキ的愛情表現の結末【完】
5年3組の教室。


「静岡から来ました、渡辺有希です。
 よろしくお願いします」


80余個の瞳を向けられて、有希は、昨夜桂子に何十回も練習させられたセリフを言った。

そして、桂子に教えられたとおりに、いかにもおとなしそうにモジモジして見せた。



その転校生を、41人のクラスメイトたちは好奇心いっぱいにみつめていたが。


中でも、クラスのリーダー的存在、東哲也(ひがしてつや)は有希をじっとみつめていた。



休み時間ごとに有希を中心に半径2mの円ができたが、その時も有希はおとなしくしていた。

と言っても、口を開くと本性が出てしまうので、ただ単に黙っていただけのことであるが。



そして、母の思惑通り、有希はおとなしい少女という、およそ見当違いな印象を周りに植えつけることに成功していた。

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