ガキ的愛情表現の結末【完】
「あ、あのね……急に3日に引っ越すことになっちゃって……絵の具とか持って帰らないと……」


しどろもどろの有希の答えに。



3日――?

あと10日たらずで別れが来る――。


そのことにもショックを受けたが。


半月以上一緒に帰って笑い合えるようになったのに、仲良くなれたと思っていたのは自分だけだったのか――。


この期に及んでまだ転校することを話してくれない有希に、哲也は傷ついた、と同時に怒りを覚えた。



「引っ越すんなら学校に置いといた方がいいじゃん。
 普段置きっ放しにしてるくせに、なんでわざわざこのタイミングで持って帰るんだよ。
 そのまま置いとけよ」


刺々しい哲也の言葉に追いつめられ、


「……ほんとは……転校するから」


有希は消え入りそうな声で白状した。



やっと有希から真実を聞き出せたのに、哲也の心の棘は抜けなかった。


「……転校しないって言ったじゃん」


哲也はけっして本心で言ったわけではなかった。


「引っ越すだけって言ったじゃねぇか」


有希が転校することはとっくに知っていたし、この急な事態は別としても、覚悟もしていた。


だが。


「ウソついてんじゃねぇよ、チビ」


哲也はイライラを抑えることができなかった。

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