ガキ的愛情表現の結末【完】
3月29日の夜。


「大ニュース、大ニュース!!」


リビングルームのドアを開け、大作が飛び込んできた。


「もしかしてオレに内緒で送ってたジュノンボーイの――」


隆史のふたたびのボケを遮って、大作は有希の目の前に立つと、


「転校、しなくてよくなったぞ!」


大ニュースを発表した。


「え?」

「1年後にまたこっちに転勤することになった。
 だから、父さん、単身赴任することにする。
 お母さんもそれでいいな?」



実は、有希に泣かれてしまった翌日、大作はダメもとで異動願いを出し、さらに入社以来20年のつき合いの上司に泣きついたのだ。


「お父さん、ありがとう!」


有希はおそらく生まれて初めて、素直に、そして心からこの言葉を口にした。


大作の想像では、この後有希は自分に抱きついてくるはずだったが。


「友達にメールしてくるっ」


有希は大喜びでリビングを出て行った。




いろいろな意味で大作を気の毒に思った隆史は、


「お父さん、これからはナイター、好きなだけ見られるよ」


せめてもの慰めを言ったのであった。


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