愛と哀
「嫌っ……!!!」
咄嗟に振り回した右手が春田くんの頬に勢い良く命中。
パンっと乾いた音が響いた。
「あっ……」
ヤバいっ……。
春田くんは私から離れ、叩かれた頬を押さえた。
どうしよう……ヤバい……。
冷や汗が滲み、言いようのない緊迫した空気に包まれた。
「ご、めん……」
「……」
「ごめん、なさいっ……」
怒った?
春田くんは頬を押さながら俯いたまま何も言わない。
「ほ、本当にっ……」
「七乃、ごめん。少し強引過ぎたね。嫌な思いさせてごめん」
怒ってる風でもなく、春田くんは私の頭を撫でて寝室から出て行った。