愛と哀





「ダメ……。暴力は、やめて」



春田くんは露骨に不満そうに「わかった」と言った。





「帰るよ」



そう言って彼は私の手を握って歩き出した。





「おーい、夕麻ー!!あんま七乃ちゃんを苦しめるなよー!!」


後ろから玲央さんの叫ぶ声が聞えた。

だが、春田くんが振り返る事はなかった。




無言のまま手を引かれて、家に到着。


気まずい沈黙が流れる中、リビングに入って春田くんはようやく私の手を離した。





「あの、ごめんなさい。勝手に外出しちゃって……」


「……」



無言で春田くんは台所へ。

私の話も聞いてくれないくらい、怒ってるの?




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