愛と哀
動揺すらしてない。
平然としてる。
人を殺したかもしれないのに……。
「春田くん……救急車、呼んだ方が……」
「キミは優しいね。あんな女の心配をするなんて」
低い声でしゃべりながら、彼は手でスーッと私の髪をといた。
たったそれだけの事でゾクッとした。
鳥肌が立った。
「っ……」
怖い。
今は春田くんの事が怖くてたまらない。
自分の実の親を階段から突き飛ばして、冷静でいられるなんて……。
私だったらこんな風に平静を保っていられるかな?