愛と哀





私は包丁を抜いた。


彼は床に倒れた。



しゃがんで、彼の顔を覗き込んだ。




「なな、のっ……」


震える声で呟いて。
震える手を私の方に伸ばした。




「夕麻くん……ごめんなさい……本当にっ」



何故、彼の愛情は歪んだのかな?



もしも彼が誰からも愛されていたなら、少なくともこんな結果にはなってなかったかな?




< 269 / 283 >

この作品をシェア

pagetop