愛と哀
「あの女はとんだクソ野郎だよ。いっつもいっつも遊び歩いて。マジ何様のつもりだよ」
春田くん……?
彼とここで暮らすようになってから数日だが、初めてだった。
こんな表情を見たのは。
こんな彼を見たのは初めて……。
カラン、と。
手から箸が落ちて音を立てる。
それで我に返ったのか、春田くんは再び穏やかな表情をした。
「七乃、そんな顔しないで。ごめんね?変な話しちゃって」
「ううん……」
「うちはいろいろ複雑でさ……」
「そっか……」
あえて、追求はしない。
人の事情に首を突っ込むのはダメ。