今日僕は魔女を拾いました
さゆりの説明によると、手鏡を犯人にかざしてみると、姿が映らないのだそうだ。
人間なら鏡に映るので、映らないことをまず確認する必要がある。


「はい、これを持っていて。
このボタンを押せば、私と仲間が気づく仕掛けよ。」


「すごいね。これも魔法で?」


「もちろん。
誰かが頭にこういうものがあれば・・・って思い浮かべられれば、あとは魔法ですぐにできあがるわ。」


「へぇ・・・すごいねぇ。
ってことは頭にさゆりさんが浮かべば、さゆりさんもできあがるとか?」



「はぁ?ぷっ・・・面白いことを言うのね。
それは無理よ。
生きてるものはダメなの。
禁断の魔法にも指定されてるわ。

もちろん、禁断っていわれるくらいだから、余計に作ってみたいってやったことある人もいるのよ。
そうしたら・・・中身のない形だけできたの。
まるで着ぐるみみたいにね。」


「そっかぁ。何でもできてしまっては、世界が壊れてしまうよなぁ。
わかった、ありがと。
何かあったらこれ使わせてもらうよ。
うん・・・ふふっ。」


「どうしたの?ご機嫌?」



「さゆりさんがこうしてうちにいてくれるのが、うれしくてさ。
朝は味噌汁の香りで起きて、寝る前だっておやすみが言える。

もし、いなくなったとしたら・・・とてもさびしくなってしまうな。」


「博仁さん・・・。」




さゆりは胸の奥がキュン!と痛くなった気がした。

(私、そんなこと言われたの初めてかも。
もちろん、男性の家に強引に住むなんてことも初めてだけど・・・。
博仁さんは30才で私は6万をとっくに超えてるのに。

私は魔女で博仁さんは人間で、いっしょには生きていけないわ。
魔界にも博仁さんみたいな人がいたらいいのに・・・。)



それから不思議なことに切り裂き魔の話は聞かなくなった。
さゆりと魔界からの捜査班も敵の行方がつかめなくなってしまった。


「どういうことなの!
あんなにいろんな電車に乗って大騒ぎだったのに・・・。」


「そうだね・・・犯人の姿もニュースもうまく消えてる・・・。
だけど・・・さゆりさんが心配だ。ふぅ・・・。」


「えっ?」


「捜査の連絡のためとはいえ、このせまい僕の部屋にいろんな男が出入りしてるんだからねぇ。
しかも小さくなって君の家の中なんて、僕は気が気じゃないよ。

とくに班長のハリー・ウォナイツは目立つから困るよ。
僕にどういう知り合いかきいてくる女性までいるくらいだからね。」


「まぁ・・・仕方ないというかハリーは目立つもんねぇ。
でも悪気はないと思うわ。

勝手に熱くなって言いがかりで結婚までいった女のせいで人生数年間ずつ困らされて、ある意味気の毒なくらいなのよ。
この部屋に入るときには小さくなっておくように伝えておくから、許してあげて。」


「ハリーをやけにかばうんだな。」
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