今日僕は魔女を拾いました
キッとさゆりをにらみつけたつもりで博仁はつっこんだつもりだった。

それなのに、さゆりの表情を見て博仁は固まってしまった。


(こわい・・・。
なんだ!この冷たい目は・・・。

今にも簡単に僕を殺してやるぞみたいな、怖い顔をしている。)


「人間なんてこれだから困るわ。
がんばって生きても100年程度までなんだから、仕方がないといえば仕方がないけど。

ハリーは6万8000年は第一線でがんばっているわ。
その間に、死にかけたことも多いわ。
大怪我をして自分で治癒魔法をかけてここまで生き延びてきたの。

結婚だって何回かしてるわ。
博仁さんたちみたいな人間には理解できないと思うけど、私たちは長い年月の中で人間よりもずっと精神的に成熟してる。

私は呪いのせいで、恋人なんていないけど、友達はいるわ。
ハリーもそのひとり。
仕事は真剣だし、私生活だって乱れてるわけじゃない。
見た目がきれいだから仕方のないことよ。
ずっと尊敬してるわ。

ハリーだけじゃない、魔界の者を知りもしないで悪くいわないで。」



「わ、わかった・・・ごめん。
守ってもらっているのに申し訳ない・・・。」


「うん。わかればよろしい。
とにかく、いなくなった犯人がまた被害者をつくらないうちに何とかしなきゃね。」




その夜、博仁は深夜から出かけ、同じ職場の友達である高田直己のアパートで缶チューハイを片手に嘆いていた。

「おまえの方から酒盛りしようなんてのりこんできたから、珍しいなと思ったら・・・。
どうした?
女にでも振られたのか?」


「いや、振られるどころか相手にもされてはいないと思う。」


「なんだ、そりゃ?
天然系なお嬢さんなのか。
おまえのアプローチに何ものってこないとか?」


「アプローチなんてできないよ。
(彼女は6万歳超えてるし・・・なんて信じられるわけがない。)」


「なぁ、そういうときってさ、どうせダメな要素が多いんだからやれることを全部やっておいたほうがよくね?」


「やれること?」


「そそ。手を握るのも殴られるの覚悟でとかさ。
キスしちゃうとか、それ以上とか・・・相手に警察呼ばれたとしても、自分の気持ちはすっきりすると思うんだ。
何もしないで、だめだってあきらめるよりかはずっとカッコイイと思うぞ。」


「そ、そうだな・・・。」


博仁は酔いを醒ましながら、高田の言葉を思い出していた。


(やっぱり、このまま犯人がつかまるまで守られているのは嫌だ。
俺はいくつであっても男だし、彼女をもう忘れるなんてできないよ。)
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