今日僕は魔女を拾いました
さゆりのことも博仁の家族には好印象で、楽しい晩餐になった。


(さゆりさん笑ってるな。こうしてると普通のかわいい娘さんなのにな。
魔女だなんて誰も信じないだろうな・・・。)


「ありがと。」


「うわっ!(しまった・・・。まだ今日が続いてるんだった。
うっかり思ってしまったことが!)」



さゆりは客間に、博仁は実家の自分の部屋で寝ることになり、博仁は早めの就寝時間をとるために自室へと入った。



「うわっ!な、なんでさゆりさんが?」


「私は魔女だもの。どこでも自由に行き来できるわ。
これから、おばあちゃんの手がかりを見つけなきゃならないしね。」


「そ、そうだった。
ごめん、ちょっとここんとこ仕事が忙しかったりで疲れてる。」


「大丈夫?体マッサージしてあげようか?」


「い、いいから。お客さんにそんなことしてもらうわけには・・・。」


「魔法でだから、寝ていて。
体をほぐしてあげる程度だから。
それに私・・・キスもしてあげられない女だから。」


(気にするなよ。期限までには呪いをといてやるから。
かわいいコには親切にしないとな。
キスしてあげられるとお互いいいんだろうけどな。)


「呪いが出なかったら私も博仁さんとキスしたいわ。」



「はっ・・・しまった。また・・。
僕はどうかしてるな。
これじゃ、まるで君の呪いにつけこんでるかのようだ。
ごめん。」


博仁はさゆりを抱きかかえると部屋の外に出して、自分は部屋に入り鍵をかけた。


「ごめん、僕に近づかないでくれ!
魔法使いの君にこんなことをしても無駄なのかもしれないけど、僕がおかしいんだ。

自分の部屋にもどって目的とやらを達成してくれ。」


クスッと笑いながらさゆりは部屋へもどった。

そして、いくつかの魔法道具をとりだし、博仁の実家から大好きなおばあさんの手がかりになるものを探した。


「あった!これだわ。
亡くなったときに、おばあちゃんと見た目そっくりな女性がこの家に嫁いでる。

やっぱりそうなんだわ。
一度死んで、人間になったんだ・・・。
そして愛する人と・・・いっしょになれたのね。
なんて強引で、強い志だったんでしょう。

そこまで好きになれる男性ができたのね。
呪いも、魔界での命さえも捨てていけるほどの恋をしたのね。」


そこまでおばあさんの過去を調べ上げたところで、さゆりは胸が痛くなった。

「私はそこまで愛する人はできるのかしら・・・。
ずっと魔界で生きてきて、恋愛感情すら起きなかった。

じゃ、人間は?
人間は博仁さんしか個人的に近づいたことはない。
もっと知ればいいのかな?
でも、怖いわ。」
< 7 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop