今日僕は魔女を拾いました
翌日、博仁が目を覚ますと母とさゆりが朝ごはんのしたくをしていた。


「ひろ、今日は仕事なんでしょ。
さゆりさんは帰るっていうんだけど、あんたはそのまま仕事行くの?」


「うん。
帰る駅は同じだからいっしょに帰るよ。」


「そうかい。
近くに住んでいるんだね。

じゃ、いつもと同じだけど、お父さんの野菜をさゆりさんにもお土産に持って帰ってもらわなきゃね。
さゆりさん、ほんとに料理上手だもの。
見かけが若いから、ほんと驚いちゃったけど、どうしてしっかり者でお料理上手でいい娘じゃないの。」


「う、うん・・・。
いいお付き合いしてるとこだから、あんまりプレッシャーかけないでほしいな。」


「あら、そうなの。
じゃ、あんまり家のこととか言っちゃダメなのね。
わかったわ、母さんもひろに協力してあげる。」


「あ、なぎさのやつどうした?
帰ってきてないみたいだけど・・・」



「なぎさは昨日はお見合いパーティーがあってその後、地元の女のコどうしで女子会って駅前のホテルに泊まったのよ。
適齢期だし、うまくいい相手が見つかってたらいいんだけどねぇ。」


「そだなぁ・・・あいつももう25だもんなぁ。
いい男を見つけてもらわないと。」


「そういうアンタも早く、さゆりさんにいい返事をもらいなさい。」


「あ、はははは・・・了解。」



博仁は母親の言葉にどきまぎしながらも、何とか嘘をまじえてのりきった。

さゆりはニヤニヤしながら博仁の実家を出てからつぶやいた。



「博仁さんもけっこうせっぱつまってるのね。
妹さんの結婚式に出れば、次は・・・ってたくさんの人に言われるのは間違いないだわ。」


「確かにそれは言えてるな。
あっ!いい考えがある。

妹が結婚するときには君も出席してくれればいいんだよ。」


「えっ?どうして・・・」


「当然、僕の彼女としてさ。
そうしたら、僕は余計な説教をされずにすむじゃないか。」


「ダメよ。
私はその頃には・・・もう・・・人間界には来れないから。
言ったでしょ。
半年過ぎたら、結婚してなければいけないの。
結婚していなければ、そういう魔女としての生き方をしなきゃいけないの。」


「あ・・・魔力が減ってきて敵が増える。
どこかにこもって自害か。

じゃあさ、結婚しようか?」


「はぁ?」


「だから僕と結婚すれば解決だ!
そうだろ?」


「あなたねぇ・・・私に今すぐ死ねというの?
私すぐに死にたくないもん。」


「半年過ぎても死ぬなら同じじゃないか。
それに、ほら、おばあさんの記録にもあったんだろ。
神様に、心臓を僕が捧げて結婚したいと頼めばいいんだし。」


「できるの?
私の死体を抱えて・・・。」


「あ・・・。それは・・・。」
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