初恋も二度目なら
「じゃあこれを使ってください。部長のハンカチは洗ってお返しします」
「いいよ。それやる」
「え?で、でも・・・」
「それならおまえも使えるだろ?とっとけ」
「じゃあお言葉に甘えて。ありがとうございます。部長にそのハンカチは・・・」

生成り色の隅の一つに、小さな一輪のスズランの刺繍が施されている今日の綿麻混合のハンカチは、私のお気に入りの一枚なんだけど・・・。

「花模様はなぁ」
「男性だから、やっぱり合わないです・・・」
「もらっとく」
「え!」
「なんだよ」
「いえっ。じゃあ、親友同士の物々交換ってことで・・・。でも、部長の方が損してる気が、しないでもないんですけど」
「んなこたねえよ。ありがとな」と部長は言って、私に顔を近づけた。

そして「もう“私なんか”って言うなよ」と、私に向かって囁いた。

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