初恋も二度目なら
「え?あの・・・あっ!」

部長、確か「今度そのフレーズ聞いたらキスしてやる」って言った・・・。
てことは、さっきのキスって・・・。

「別に俺はおまえが何言ってもいいんだが」
「ぶちょー・・・」

つい脱力してため息をついた私を見た部長は、涼しい顔してクスクス笑っている。
ホントもう、部長ってば・・・どこまで私をからかえば気がすむのかしら。

「小夜」と部長に呼ばれた私は、俯いたまま、「・・はい」と気のない声で返事をした。
でも、「おまえはモテる。マジで俺はそう思ってるよ」と部長から言われて、思わず顔を上げた。

「部長・・・」
「だから仕事ん時くらいはメガネかけといたほうがいいと、俺は思うんだ」
「・・・え?それ、どういう・・・」
「おまえは社内の男(ヤツ)とはつき合いたくないんだろ?」と部長に言われた私は、ハッとした。

そうだった!
私ったら、重大な恋愛ポリシーをすっかり忘れて・・・!

「あぁ、部長っ!」
「ようやく気づいたようだな、卜部。そうだ。おまえはキレイだ。メガネを外せばもっとキレイだ。モテないわけがない。だが、おまえは社内の野郎とつき合うつもりがないのに、なぜ社内でモテようとする」
「そう・・・です、ね。私・・メイク直してきます」

そして、コンタクトを外してメガネをかけた、普段どおりの顔で営業エリアに戻ってきた私を見た部長は、満足気な笑顔を浮かべていた。

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