初恋も二度目なら
作戦は失敗した
そして渋滞にはまることもなく、私たちは予定通り3時半ごろ、婚活パーティー会場のヴィーナスガーデンチャペルに到着した。


「小夜(さや)」
「はいっ」
「俺の髪をグシャグシャにしろ」
「・・・はあ?」

私は思いっきり怪訝な顔で部長に問いかけたけど、部長のハンサムな顔は真剣そのものだ。

「あのぅ。なぜ、でしょう」
「そうすれば俺がズボラなオタクに見えるだろ?」
「全然見えません!」
「そうか。じゃあ・・・これでどうだ」

と私に問いかけた部長は、長方形レンズのべっ甲縁メガネをかけていた。
しかもご丁寧に、部長は自分で髪をグシャグシャに乱している。

「どうだ小夜。少しはもっさりしたブサイク男に見えるか?」
「あの・・・ぶちょう」
「なんだ」
「親友として、正直に言ってもいいですか?」
「もちろん」
「それ、私のように、目の大きさが変わるくらい分厚いレンズじゃないし、度も入ってないようなので、メガネをかけても、部長のカッコよさは全然損なわれていないどころか、とてもよくお似合いです」
「何・・・?」
「しかも部長の場合、メガネをかけてもすごく知的に見えるから、メガネ男子が好きって人たちには、かなりポイント高いかも・・・」
「しまった!俺としたことが・・・迂闊だった。この作戦は失敗か」と部長は言うと、だてメガネをかけたまま、ハンドルに顔を突っ伏して、深ーいため息を一つついた。

その時点で、手で乱した部長の黒髪は、元に戻ってしまってるし。
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