初恋も二度目なら
「色も・・・」

石塚さんは、しゃべってる途中で、手に持っていたお肉にパクッとかぶりつくと、ムシャムシャと食べ始めた。
最初は無言の、そして今は、石塚さんがお肉を食べる音だけが、私たちのあたりに響いている。

そろそろこの人から退散したいと切実に思い始めた矢先、石塚さんが「あーうまー」と言って私の方を見た。

「あ!ちょっと動かないで!」と私は言うと、片手でバッグの中を漁って、ハンカチを取り出した。

「どーかした?」
「口の横に肉汁がついてます。拭くから顔上げて」
「はーい」
「・・・はい。これでオッケーです。じゃあ私、ハンカチを洗いに・・・」
「やっぱ俺ダメ」
「はい?」

ダメって・・・何が?
しかも肉汁を拭いたお礼も言わないし。
別にお礼を言ってもらいたいから拭いたんじゃないけど、いい気がしないのは、石塚さんの顔が、どことなく不機嫌に見えるから?

私、何か気に障ることをしたの??

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