初恋も二度目なら
つい体を居心地悪そうにモソモソと動かした私に追いうちをかけるように、「だからおまえくらいの背が、俺にはちょうどいい」と言った。

「ふぁい!?」
「おまえとキスするには、少し屈めばいいだけだろ」
「まっ!ぶちょーっ!!」
「だからおまえが卑屈になる必要はない。チビ野郎と同類に堕ちるな」

・・・これが部長流の励ましなんだろうな。
簡単な言葉遣いだけど、説得力があるから納得できる。

私は運転中の部長にニコッと微笑むと、「はいっ」と返事をした。

「今のおまえは、昔のように背を丸めて歩いたり、身を縮めて自分を小さく見せようともしない。自分自身の存在を誇りに思っている証拠だ」
「それはたぶん、美しい歩き方講座を受講したからだと・・・。そこで、歩き方や仕草を学んで、背が高いことは長所なんだと思えるようになったんです」

私より背が高い、元モデルの先生から、「自分の魅力を押し殺す、なんてもったいないことはやめなさい!背が高いこともサヤコさんの魅力の一部なのよ!」と、何度も言われたんだよね。

おかげで私は、背が高い自分であることに、自信が持てるようになった。

「少し早いが、晩メシ行くか。俺、肉一切れしか食べてないんだ。腹減った」
「そうですね。ミニマンゴープリン1つとプチシュー1つしか食べてないから、私もおなかすきました」
「じゃ、“ナポレオン”行くか」

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