初恋も二度目なら
「白か・・・。似合ってるが、体にぴったりフィットしたノースリーブを歓迎会で着るのはやめておけ」
「な・・・」
「川端を始め、何人かの野郎は、おまえの胸に注目してたぞ」
「そんな!私、タートルネック着てるんですよ?」
「関係ない」
「部長こそ、関係ない・・・」

ジャケットを着終わった私は、勢いでクルッと後ろをふり向いて・・・ビックリした。
なぜなら、すぐ間近に長峰部長の顔があったから。

部長はハンサムな顔をニヤッとさせると、私にバッグを渡してくれた。

「鈍いおまえとつき合う相手は大変だな」
「まっ。失礼な・・・お金、ありがとうございます」

最初はタクシー代の残りは返そうと思っていたけど・・・やめた。
タクシー代とクリーニング代を含めて1万円、キレイに使いきってやる!

「それじゃあ・・おつかれさまでした」
「小夜(さや)」

歩こうとした私の手首を、部長が優しく掴んだ。

「なん・・・ですか、部長」
「おまえのメガネを外していい男は俺だけだ」
「・・・部長の酔った戯言は聞かなかったことにします。だから手を離してください」と私が言うと、部長はあっさり手を離してくれた。

でもハンサムな顔には、相変わらず余裕たっぷりな表情で・・・。

「それから、私を名前で呼ぶのもやめてください」
「これでもTPOはわきまえているつもりだ」
「あ・・・そう・・・」
「じゃあな。気をつけて帰れよ」

どこまで屁理屈こねてんだか。
でもなぜか、彼が言うと屁理屈にはなってないような気がするのよね・・・。

私は、歩きながら深いため息を一つついた。


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