初恋も二度目なら
「映画好きな友だちが人数足りないからって、帰宅部の私を引っ張り込んで作ったの。人数ギリギリの5人でスタートしたから、“部”でもなかったし。会員は3年間5人だったし。でも、きっかけはどうであれ、そのおかげで洋画を観るのが好きになって。それで英語も好きになったのよね」
「あ、そう。好きなジャンルは?」
「ハッピーエンドのラブコメ。後はファンタジーとか。映像や風景がキレイな映画も好き」
「あー、なるほど・・・じゃあ卜部ちゃんって、“ワンダフル・デイ”とか好きだろ」
「えーっ?なんで分かるの!?あれは私一番のお気に入りの映画なのよぅ!」
「いや。実は俺も映画鑑賞好きだし」
「ホント!?なんか、世間って狭いねっ」
「そーだな・・・あ。確かRシネマで“ワンダフル・デイ”を上映してるんじゃなかったかなぁ」
「あら、そうなの!?」
「おう。卜部ちゃん、一緒に観に行こうぜ」
「うん!ぜひ」
「俺、調べとくから。でも、あそこの再上映期間ってあんま長くないから、多分今週か来週になると思うが、それでも大丈夫か?」
「うん。それは大丈・・・」

と私が言ってる途中で、「卜部」という低い声が、私たちの間に割って入った。

「部長!?な、なにか・・・」
「コーヒー」
「あぁはいっ。川端くんもコーヒーだったね?」
「あ・・ああ・・・ありがと。じゃ・・・後で」
「うん」

なんか部長、川端くんを追い払ったような・・・しかも視線だけで・・・そしてコーヒーを淹れてる私を、部長がじーーーっと見ているような気が・・・見なくても視線を感じるんですけど・・・。

「あの・・部長」
「なんだ」
「通してください」と私が言うと、部長は無言で道を開けてくれた。

でも部長・・・なぜ私と並んで歩いているんでしょうか!?
それは同じ方向だから・・・だよね、うん。
一緒に給湯室を出たのに、一緒に歩いてなかったら、返って不自然よね。
と、心の中で言い聞かせながら、私は、隣から発せられてる威圧感を極力感じないように、そして、コーヒーをこぼさないように注意しながら歩いた。

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