初恋も二度目なら
それから30分ほど経った頃。

あ!川端くんが帰ってきた!
私は、いつもどおり平静を装って歩きながら、給湯室の方へ行った川端くんを追いかけた。

「川端くん」
「あー。卜部ちゃん」

と言った川端くんのにこやかな顔も、穏やかな声も、普段どおりだったので、私はひとまずホッとした。

でも、お互い顔を見ながら、「金曜は」と言ったのは同時だった。

「卜部ちゃんからどうぞ」
「あ。じゃあ・・・。金曜は、本当にごめんなさい」
「謝らなくていいよ。残業になったのは卜部ちゃんのせいじゃないし。で、どんな仕事を長峰部長から仰せつかったんだ?」
「今部長が行ってるプレゼンの資料を、チェック読みしてほしいって」
「ふーん。時間かかったのか?」
「8時前くらいに終わった」
「そっかー」
「でも、英文だったせいか、疲れちゃって・・・」
「仕方ないよな。でも“ワンダフル・デイ”の再上映は終わっちまったけど」

なんて言われると、ううん、言われなくても、「でもそれから部長と一緒に映画観たよ」と、川端くんには言えない・・・。

誰にも。

あれは、部長と私の秘密・・・になるのかしら。
少なくとも、私は誰にも言うつもりはない。

その代わりと言っては何だけど、川端くんには「ホントごめんね!」と、もう一度謝った。


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