初恋も二度目なら
私が住所を告げると、部長はカーナビに何やら入力して、車をスタートさせた。
低いボリュームで音楽がかかっている中、部長が私に「いつ引っ越したんだ?」と聞いてきた。

「2年前です。30になった記念と言いますか。せっかく痩せたんだし、いっそのこと環境も変えようと思って」
「それで前住んでいたマンションとは違う区域なのか」
「まぁそうですね。予算の兼ね合いもありましたし。でも結局のところ、会社とジムには通いやすいところで、バス停とか駅までのアクセスがいいとか、スーパーが近くにあるとか、私的に色々と譲れない条件がそろっていたのが、今住んでいるマンションです」
「ふーん。おまえ、ジム通って痩せたのか」
「はい」
「おまえと運動って、あんま結びつかねえけどな」
「まっ・・・確かに、私は花ならぬ、運動オンチですけど」と私が呟くと、部長がクスッと笑った。

なんかこの雰囲気が・・・楽しい。

「なので、加圧トレーニングを一生懸命したんです。これなら続けられると思って」
「ふーん。で、そんときもコンタクトつけてんだよな?」
「えっ?ええ。やっぱりメガネじゃ・・・」
「しづらいよな?」
「え・・・」
「だから仕方ないよな?」
「えぇ・・・」

な、なんか部長の声が、不穏に響いてる気が・・・。

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