恋のお相手は小さな男の子
私の前の席の椅子を引くとそこにストンと座り、ズイッと私に顔を近付けてくる。
「それ以外に何があるのよ」
「だよね」
唇を尖らせる彼女に苦笑いが漏れる。
「で、どうなの?」
どんな気持ちか……か。
そんなの決まってる。
「キツい。辛い。泣けた」
もう本当にそんな気持ち。
一気に言った私のその言葉に、夕香の眉間にグッと皺が寄る。
「私で良かったら話はいくらでも聞くしね」
「うん。ありがとう」
話したくなったら話してね。というその気持ちがありがたい。
「それにしても、泣けた。って何で過去形なわけ?まだ、泣ける…でしょ?強がんなくていいよ」
夕香が唇を尖らせたままそう突っ込んでくる。
が、言われてから気付いた。
あれ?私、何で『泣けた』って過去形なんだろう?
「えっと、……本当だね」
自分でも不思議に思って少し首を傾げていると、「無理しないでよね!」と言って夕香が私の背中をパシッと軽く叩く。
それに、更に首を傾げた。