恋のお相手は小さな男の子
佑真君はそのまま、「前歯がって…」と言いながらお腹を抱えて笑う始末。
「…………」
言葉が出ないってこういう事をいうんだと思う。
純粋な和真君の口から出た言葉は紛れもなく真実で。
わざと嫌な事を言っているとかなんかじゃない。
自分でも若干前歯が大きいかなとは思ってたけど。
笑うと前歯が乾いて、そこに唇がくっつくなんて現象が起こる事もあったけど……。
小さい子供は純真無垢だから、たまに正直過ぎて恐ろしい事をさらっと言うっていうけど、……あれは本当だったんだ。
ズーンと沈んで肩を落としていると、ぽんっと肩を叩かれる。
それにふっと顔を向ければ、佑真君が優しく微笑んでいて。
「葉月。俺はお前の前歯、可愛いと思うぞ」
そんな言葉を吐く。
「思ってないくせに」
佑真君が私の事を褒めるなんてそんな事あるわけない。
哀れな私に向けた口からの出任せだ。
そう思って唇を尖らせた。